介護の作文
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冬休み中のことです。
アニーが宿題の追い込みでヒーヒー言っていました。
作文はアニーにとってさほど大変な宿題ではない様子。
文章を書くのが好きなようだし、読ませてもらうと視点がなかなか面白くて、
言葉の使い方も新鮮。
ただ、学生の時って当然のことながら、
作文を書くには必ず「お題」があるわけで。
私は昔から、散文を書くのもお題作文を書くのもさほど苦労した記憶はないですが、
自由人のアニーには、
「〇〇について述べよ」
な作文が嫌みたい。
でも嫌だとは言っていられないから頑張ってもらわないとね。
で、冬休みの作文。
今回のお題は
「介護」
だそう。
一口に介護の作文と言っても、切り口はさまざま。
それに、アニーは「介護の作文」と ごくシンプルに言ったけれど、
多分、もう少し細やかなコンセプトがあるはず。
とはいえ、高校生の男子にとって、介護の作文というのは確かに難しいかも。
家に介護を要する人がいるのを見ているのであれば筆も進むのでしょうが、
うちのように、まだまだ両親が元気にしていてくれる場合、
「介護? は?」
という思いなのでしょう。
でも私などは、それはそれなりにいろいろ書くことは浮かんでくるし、
まだ人生経験の浅いアニーには思いつかないような方向からのアドバイスができればと、
先日の母の入院中の話を少しだけしてみました。
「介護っていうのとはまた違うかもしれないけど、おばあちゃんの入院中、
看護師さんがやってくれないことを毎日お母さんがしに行ったよ。
それをアニーの視線で書いてみたら?」
完全看護の病院ですが、どこまでも看護をお任せできるというわけではありません。
術後の入浴は完全に家族の仕事でした。
ここからえぐい話を書きます(※閲覧注意です)。
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母は開腹手術をしたのですが、術後の経過が優れず、傷がなかなかふさがりませんでした。
担当医は、
「もう一度、縫い直しましょう」
と勧めたのだけど、母はどうしても嫌だという。
それもわかります。全身麻酔は辛いから。
それなら、と違う処置を提案してきてくれて、
毎日お風呂のシャワーで傷口を洗い、清潔にしてから特殊な薬を塗る、ということに。
そして入浴の補助は、看護師さんではなく家族がしなければなりませんでした。
母は「一人でできる」と言っていたのですが、
さすがに一か月近くも寝たきりで体力が落ちているところでの手術だった上に、
よろける足でお風呂なんて入って、もし骨折でもしたら・・・
と思うと、とてもじゃないけれど付き添わなければ入らせるわけにはいきません。
まず初日にお風呂に付き添って、心が折れました。
傷口を覆っているものを外した途端、ぱっくりと開いた傷からは、血が流れだし、
蒸気のこもった風呂場に血液の匂いが 一瞬にして充満しました。
あまりにも衝撃的で目をそらしましたが、
すぐに込み上げてくる吐き気。
でも吐くわけにはいかないし、ここで私の様子がおかしいと気付かれたら、
また母が遠慮することになります。
母に見えないように自分の足をつねり、吐き気を痛みで紛らわせました。
そんなことが半月近く続いたでしょうか。
傷口を見ることにはすっかり慣れて、吐きそうになることはなくなりましたが、
精神的・体力的な不安は常にありました。
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父も入浴の付き添いをしてくれましたが、
母としては、やはり男の人は気が利かないから嫌だ、コトリにやって欲しいというので、
毎日入浴に付き添う生活を続けていたのです。
疲れがどっと出たのはむしろ母の退院後で、
入院中は常に気が張っていたせいか、体調を崩すことがなかったのだけが幸いでした。
入院中は、いつも
「自宅で介護している人は本当に大変だなぁ。 私にできるかな」
と思っていたし、元気でいてくれる両親に感謝するばかりでした。
そんな経験を、息子のアニーからの目線で綴ったらどうかなと思ったのです。
どう感じるかはアニーにお任せです。
アニーが高校二年生で、どう感じるかを素直に綴れば宿題は一つ完了するのだし。
ところが、です。
私の提案に、アニーは一言。
「お母さんは介護なんてしてないじゃん。 あんなの介護なんて言わないよ」
とても悲しかったです。
少し前にも書きましたが、これまで一度も入院中の出来事を話したことはありませんでした。
一度だけ、まだ手術前だった時に一緒にお見舞いに連れて行ったことはありましたが、
手術がどうだとか、傷口がどうだなんて、一言だって言ったことなかったのに。
一体、アニーは何を知っているっていうのか。
というか、何も知らないよね?
知らないのに、どうしてそんな言葉が出てくるのか。
悲しさと怒りと情けなさと、いろんな思いが洪水のようにあふれだし、
ここまでずっと封印していた、入院中に何をしていたか、どう感じたのか、
リアルに話して聞かせました。
さぞかし怖かったことでしょう。
正直、気持ち悪いとも思ったでしょう。
どう思ったかなんて知りません。
私はただ、事実を伝えただけ。
もちろん、本当の介護とは言えません。
本当の介護をしてらっしゃる方にとって、私のしたことなんて なんでもないことでしょう。
ただ、それを知りもしないアニーにああいう言い方されるのは心外です。
経験値が不足していることも気づかずに、
わずか17年の経験だけで物事を推し量ろうとする浅はかさが嫌いです。
アニーには思いやりや優しさが足りないのか?
フト不安になることがあります。
でも実際にはトートよりもアニーの方が人情味があるタイプ。
わかりにくいけれど、アニーなりの優しさはたくさん持っている子です。
虫の居所が悪い、お母さんの言い方が気に入らなかった、人から言われるのが単純にイヤ、
原因はいろいろあるでしょう。
でも、それを飲み込めないのがまだまだ経験値が浅い証拠。
それは私もしかり。
だからこそ、相手の言うことに耳を貸すということが重要になってくると思うのだけど・・・
アニーの心にはそんな気持ちがまだまだ届かないようです。
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